LAST HEART 『出会い』編

甥っ子達とスタバへ。

平日の夕暮れなのにすごく混んでいた。

ちょうど席が空き、そこへ座る。

コーヒーを飲みながらゆっくりしていると

「ここいいですか?」

彼女が話しかけてきた。

いくら混んでいるとはいえ、一見家族に見えるボク達の中に入ってくるとはなかなかだ。

横からだったので顔ははっきり見えなかったが、まっすぐに落ちる艶やかな髪や品のいい服装、何より立ち居振る舞いから滲み出る空気が『キレイなコ』というのをわからせた。

いつものごとく鼻の下を伸ばして

「どうぞ」

彼女はボクの隣に座るとコーヒーを飲みながらバッグからタブレットや書類を取り出して仕事らしきことをしだした。

姿勢がとてもキレイだ。

ボクと甥っ子達はそれを眺めている。

視線に気づいたのか

「あ、すいません。気になりますよね?」

やはり鼻の下は伸びたままで

「かまいませんよ」

すると弍号が彼女に

「あい」

と食べていたクッキーをあげようとした。

何やってんの!?と思ったら彼女は弐号の持つクッキーに口を近づけた。

「ア~ン・・・おいし! ありがと!

すると今度は壱号が

「おねえさんきれいだね。ぼくゆーり6さい」

なっ!?

「オマエはクレヨンしんちゃんかっ!?

ツッコむ。

笑いながら彼女は言った。

「ありがと! アタシはサトウマミ、30歳」

ボクは長いこと時間が止まった気がした。

動揺し持っていたカップを落としてテーブルの上にこぼしてしまった。

店員さんも駆けつけて片付けてる中、ボクは動揺が収まらず震えていた。

壱号が

「おじちゃんはずかしい」

いつもなら投げ飛ばしてるとこだけど、そんなのはどうでもよくて、とにかく落ち着くことに集中した。

「おじさんなんですか? てっきりお父さんだと」

「えぇ まぁ」

彼女と初めて目が会う。

綺麗な瞳だ。

彼女は甥っ子達と盛り上がっていたが、耳には入ってこなかった。

どのくらい時間が経ったのかわからないが彼女が

「じゃあお姉さん帰るね」

と立ち上がり、片付けた後、甥っ子達に手を降ってお店から出て行った。

言葉にできない瞬間で、焦りと喪失感と諦めのような感覚が交互に襲ってくる。

体が勝手に立ち上がった。

甥っ子達に

「すぐ戻ってくるからここに座ってろよ!!

そして彼女を追いかけた。

夜の冷たい風が頬にあたるととても心地良く感じるぐらいボクは高揚していた。

「すみません!!

「はい?

「あの・・・」

「え?」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「LINE教えてくれませんか・・・?

彼女は笑いながら

「いいですよ」

体の奥が瑞々しく震えた。


帰りの車の中で壱号が

「おじちゃんよかったね」

と言う。

「オマエどういうつもりで言ってんだよ?

と笑いながら。


by WASH2011 | 2017-12-12 00:24
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